Sound Tracks > Spaghetti Western | ||||||||||||||||
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Artist | ||||||||||||||||
VASCO VASSIL KOJUCHAROV & ELSIO MANCUSO |
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Title | ||||||||||||||||
UNA LUNGA FILA DI CROCI |
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Review |
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"UNA LUNGA FILA DI CROCI"の作曲者、コユチャロフとマンキューソはまったく無名だが、まさにその(無)名に恥じない凡作。'CROSSING THE BORDER' という南部ロックの男くさいゴツゴツした肌ざわりを期待したくなるタイトルをもつメインテーマは、グルーヴ感はゼロのボンゴをフィーチャーした3分近い長い導入部をもつ。なんでこれが必要なのかまったくわからない。なんか、むかしの日本のテレビ・アニメ挿入曲みたい。その後、チェンバロとスネア・ドラムを中心としたハイテンポな主題部に入る。俗っぽさを絵に描いたようなB級ぶりに開いた口がふさがらない。 メインテーマのヴァリエーションであるハーモニカ・ソロにいたっては自己陶酔の極致。このあたりから、アントニオ古賀風スパニッシュ・ギターと野暮な混声コーラスがひんぱんに顔を出すようになる。これはマカロニというよりも「Gメン75」の世界。しかもロケ地は長崎でなければいけない。声優のオリジナル・アルバムを聴いて素直に感動できる感受性をもたないかぎり、これを音楽的に評価するのはちょっときびしい。 「ブーベの恋人」で知られるイタリア映画音楽の巨匠、ルスティケリの手による"TUTTI PER UNO, BOTTE PER TUTTI" 全13曲は、正統マカロニ・ファンからはあまり評価されないだろうが、知られざる傑作といえる。音楽の感じからしてコメディ・タッチの映画のようだ。陽気で親しみやすいメロディだが、ひとつひとつの音の配置がたいへんていねい。 手回しオルガンのようなサーカス風のチャーミングな曲は、まるでフェリーニ/ニーノ・ロータのよう。思わず笑みがこぼれます。マリンバ、ドラムス、バンジョー、銅鑼などが使われるトンデモ・チャイナ調の'KUNG FU COWBOYS' は、オリエンタリズム満点でYMO、というより細野晴臣の名曲「北京DUCK」あたりのムードにそっくり。かと思えばメキシコのソン・ハローチョ風の8分の6拍子のようなリズム感をもった陽気で躍動的なビートもある。まさにチャイニーズ・メキシカン・チャンプルー via イタリアの味わい。 ラストの'RIDING TO MEXICO' にいたっては、ボサノヴァ風のリズムにのせて、メキシコ調のメロディが奏でられる。しかもトリニダードのスティール・ドラムッぽい味つけまでなされているではないか。なんたる無節操。すばらしいの一語に尽きる。ちなみに、この傑作スコアのキーを握る楽器はマリンバ。ドラムスのキレもいい。 一転して、"PREGA IL MORTO E AMMAZZA IL VIVO"は、007のテーマ曲に使えそうなスローなラブ・バラード'WHO IS THAT MAN' で幕を開ける。この調子で全編(10曲)にわたって静かな曲調がつづく。このスコアを書いたミグリアルディというひともまったく知らないけれども、コユチャロフとマンキューソとは対照的に、なかなか手の込んだスコアといえよう。現代音楽畑出身のひとなのだろうか。弦楽器やパーカッションの使い方にその傾向があらわれている。ムーディなハーモニカとハモンド・オルガンもすばらしい。 "UNA LUNGA FILA DI CROCI"の8曲がなければ満点といきたいところだが、そのことが悔やまれる。 |
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(6.8.03) |
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